1.天地開闢(かいびゃく)と天津金木
古事記には、国生みと神生みの神話が記されています。伊耶那岐(イザナギ)と伊耶那美(イザナミ)の二柱(ふたはしら)の神は、高天原(タカアマハラ)の別天津神(コトアマツカミ)より天沼矛(アメノヌホコ)を賜り、漂っている大地を完成させるよう命じられます。伊邪那岐と伊邪那美は、天浮橋(アメノウキハシ)に立ち、天沼矛で混沌とした大地をコオロコオロとかき回します。すると、矛先から滴り落ちたものが塩により固まり、淤能碁呂島(オノコロシマ)となります。伊耶那岐と伊耶那美は淤能碁呂島に降り立ち、夫婦となり、大八洲(オオヤシマ)と神々を生みました。これは、一柱(ひとはしら)の天津金木を屹立(きつりつ)させて、その側面に四柱(よはしら)の天津金木を置き並べた形象で表されており、これが天津金木の基本相となります。

2.葦牙(あしかび)と天津金木
古事記には、如葦牙因萌騰之物而成神名宇麻志阿斯訶備比古遅神という言葉があります。これは神の出現を語ったもので、葦牙(あしかび)の如く萌え騰(あが)るの物に因(より)て而(そして)成りし神の名である宇麻志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコヂノカミ)という意味です。ウマシとは良いものを褒め称える言葉で、アシカビは葦の芽、ヒコヂは男性の尊称です。ここで葦牙という植物が神名になっていることが興味深く、それについては❶葦の芽を神格化したものという説や、❷葦の芽から人類の始祖が出現したという神話からきているという説があります。実際、中国西南部(四川省、貴州省、雲南省、重慶市、チベット自治区など高い山や深い谷が多く多様な少数民族が暮らしている自然豊かな地域)、東南アジア、そしてポリネシア・メラネシア・ミクロネシアという太平洋の島々にかけての広い地域では、原初の植物から人類が生まれたという神話が至る所に存在します。また、宇麻志阿斯訶備比古遅神が天上の神であることから、地上の葦の芽そのものではないとの見方もあり、葦牙を比喩と捉えた場合、葦の生長の有り様にたとえて❸国土の成長力を神格化したものという説や、❹天地未分の混沌の中に屹立する(動かずにしっかりと立つ)偉大なる生命の樹、あるいは天柱という説、❻世界樹という説、❺現実世界の生命の存在の根源となる、天上における生命の具現化とする説もあります。たいへん興味深いのは、天地初発の神々には中国思想の影響と思われる抽象的な神名が多いのに対し、宇麻志阿斯訶備比古遅神は葦の芽というこの世界に実在するものであり、中国思想の影響を受ける前の古代日本の自然崇拝的な素朴さがある点です。
旧約聖書の出エジプト記の第3章「モーセの召命」の中に、如葦牙因萌騰之物而成神名宇麻志阿斯訶備比古遅神と風合いの似た話があります。
モーセは、舅(しゅうと)でありミディアン(地名)の祭司であるエトロ(妻の父)の羊の群れを飼っていた。あるとき、その群れを荒れ野の奥へ追って行き、神の山ホレブに来た。そのとき、芝(しば)の間に燃え上がっている炎の中に主の御使いが現れた。彼が見ると、見よ、芝は火に燃えているのに、芝は燃え尽きない。モーセは言った。「道をそれて、この不思議な光景を見届けよう。どうしてあの芝は燃え尽きないのだろう」。主は、モーセが道をそれて見に来るのをご覧になった。神は芝の間から声をかけられ、「モーセよ、モーセよ」と言われた。彼が、「はい」と答えると、神が言われた。「ここに近づいてはならない。足から履物を脱ぎなさい。あなたの立っている場所は聖なる土地だから」

天津金木は、古事記にでてくる天沼矛や葦牙を表したものであり、神がこの世界を創造するために顕した一柱(ひとはしら)と、そこから宇宙空間を創造するために顕した螺旋状のエネルギー、それにより四方八方に放射される光線(青、赤、緑、黄)を示しています。
▶國學院大學:神名データベース
▶宙吊りのカードが示す世界樹
宇麻志阿斯訶備比古遅神
3.天津金木と依り代(よりしろ)
天津金木は宇宙の縮図です。それは一つの小宇宙であり、天地創造という神業を映し出すものです。天津金木を使うことによって、森羅万象の真象を知るだけでなく、霊的な体験も深まるでしょう。神道では、神を迎えるための依り代(よりしろ)として、木を用います。伊勢神宮の心御柱(しんのみはしら)は、神籬(ひもろぎ)や磐座(いわくら)と同じく、神霊が依り憑くものです。これらはご神体そのものではなく、神を迎えるための依り代です。心御柱を二千五百分の一に縮尺した四分角二寸(しぶかくにすん:厚みが約12mm、長さが約60mm)の方柱である天津金木も、神を迎えるための依り代です。天津金木と同じ数秘構造をもつマルセイユタロット小アルカナの宮廷カード(16枚)も、神を迎えるための依り代として使うことができるでしょう。

記事更新日:2025/09/01
古事記には、国生みと神生みの神話が記されています。伊耶那岐(イザナギ)と伊耶那美(イザナミ)の二柱(ふたはしら)の神は、高天原(タカアマハラ)の別天津神(コトアマツカミ)より天沼矛(アメノヌホコ)を賜り、漂っている大地を完成させるよう命じられます。伊邪那岐と伊邪那美は、天浮橋(アメノウキハシ)に立ち、天沼矛で混沌とした大地をコオロコオロとかき回します。すると、矛先から滴り落ちたものが塩により固まり、淤能碁呂島(オノコロシマ)となります。伊耶那岐と伊耶那美は淤能碁呂島に降り立ち、夫婦となり、大八洲(オオヤシマ)と神々を生みました。これは、一柱(ひとはしら)の天津金木を屹立(きつりつ)させて、その側面に四柱(よはしら)の天津金木を置き並べた形象で表されており、これが天津金木の基本相となります。

2.葦牙(あしかび)と天津金木
古事記には、如葦牙因萌騰之物而成神名宇麻志阿斯訶備比古遅神という言葉があります。これは神の出現を語ったもので、葦牙(あしかび)の如く萌え騰(あが)るの物に因(より)て而(そして)成りし神の名である宇麻志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコヂノカミ)という意味です。ウマシとは良いものを褒め称える言葉で、アシカビは葦の芽、ヒコヂは男性の尊称です。ここで葦牙という植物が神名になっていることが興味深く、それについては❶葦の芽を神格化したものという説や、❷葦の芽から人類の始祖が出現したという神話からきているという説があります。実際、中国西南部(四川省、貴州省、雲南省、重慶市、チベット自治区など高い山や深い谷が多く多様な少数民族が暮らしている自然豊かな地域)、東南アジア、そしてポリネシア・メラネシア・ミクロネシアという太平洋の島々にかけての広い地域では、原初の植物から人類が生まれたという神話が至る所に存在します。また、宇麻志阿斯訶備比古遅神が天上の神であることから、地上の葦の芽そのものではないとの見方もあり、葦牙を比喩と捉えた場合、葦の生長の有り様にたとえて❸国土の成長力を神格化したものという説や、❹天地未分の混沌の中に屹立する(動かずにしっかりと立つ)偉大なる生命の樹、あるいは天柱という説、❻世界樹という説、❺現実世界の生命の存在の根源となる、天上における生命の具現化とする説もあります。たいへん興味深いのは、天地初発の神々には中国思想の影響と思われる抽象的な神名が多いのに対し、宇麻志阿斯訶備比古遅神は葦の芽というこの世界に実在するものであり、中国思想の影響を受ける前の古代日本の自然崇拝的な素朴さがある点です。
旧約聖書の出エジプト記の第3章「モーセの召命」の中に、如葦牙因萌騰之物而成神名宇麻志阿斯訶備比古遅神と風合いの似た話があります。
モーセは、舅(しゅうと)でありミディアン(地名)の祭司であるエトロ(妻の父)の羊の群れを飼っていた。あるとき、その群れを荒れ野の奥へ追って行き、神の山ホレブに来た。そのとき、芝(しば)の間に燃え上がっている炎の中に主の御使いが現れた。彼が見ると、見よ、芝は火に燃えているのに、芝は燃え尽きない。モーセは言った。「道をそれて、この不思議な光景を見届けよう。どうしてあの芝は燃え尽きないのだろう」。主は、モーセが道をそれて見に来るのをご覧になった。神は芝の間から声をかけられ、「モーセよ、モーセよ」と言われた。彼が、「はい」と答えると、神が言われた。「ここに近づいてはならない。足から履物を脱ぎなさい。あなたの立っている場所は聖なる土地だから」

天津金木は、古事記にでてくる天沼矛や葦牙を表したものであり、神がこの世界を創造するために顕した一柱(ひとはしら)と、そこから宇宙空間を創造するために顕した螺旋状のエネルギー、それにより四方八方に放射される光線(青、赤、緑、黄)を示しています。
▶國學院大學:神名データベース
▶宙吊りのカードが示す世界樹
宇麻志阿斯訶備比古遅神
3.天津金木と依り代(よりしろ)
天津金木は宇宙の縮図です。それは一つの小宇宙であり、天地創造という神業を映し出すものです。天津金木を使うことによって、森羅万象の真象を知るだけでなく、霊的な体験も深まるでしょう。神道では、神を迎えるための依り代(よりしろ)として、木を用います。伊勢神宮の心御柱(しんのみはしら)は、神籬(ひもろぎ)や磐座(いわくら)と同じく、神霊が依り憑くものです。これらはご神体そのものではなく、神を迎えるための依り代です。心御柱を二千五百分の一に縮尺した四分角二寸(しぶかくにすん:厚みが約12mm、長さが約60mm)の方柱である天津金木も、神を迎えるための依り代です。天津金木と同じ数秘構造をもつマルセイユタロット小アルカナの宮廷カード(16枚)も、神を迎えるための依り代として使うことができるでしょう。























































































