◎言霊マ⓫
狗(コマイヌ)也。コは囲(カコム)こと。マは向(ムカフ)こと。かこみ向ふ犬と云語にして、コマイヌと云。男女向ひ合て、かこみ守るの名也。字書にも、狗者家畜也。人の家に居て、能(よく)非常吉凶を守る。今の世に、神前に木石の狗(コマイヌ)を向ひ並へ置ことは、神をかこみ守(マモル)の相(スカタ)也。今、此マの音は、向ふ也と有て、向ふは先(さき)に解か如、睦(ムツミ)搦(カラム)の語にして、能(よく)其物に睦み搦みて、をこたらさること。是則、守るなり。故に、マの音、狗(コマイヌ)なりとある。万葉に、マソカヽミのマの仮り字に、犬の文字をかりて有。又、ソの仮字、馬(ば)の字を仮る。是等は、法則の有ことにて、全躰此マソカヽミとは、マは向ふこと。ソは背(うし)ろのこと。向ふて影を見る、相(すが)た見(み)の鏡(かが)みなり。諸獣多けれとも、狗と馬は、能(よく)人の善悪を知る。其業の有無を知る。其故に、馬に人を乗(のす)るに、業(わ)さ有る人には順ひ、業(わざ)なき人には必(かならず)逆ふて、自在を得せぬ。又、人の善意を見て、或は吠、或はほへず。又、善人を見ては、是に睦み、悪人を見ては、ほえて其門を能(よく)守る。其人を顧みて明かに知こと。鑑の如きゆへに、マソカヽミと云(いひ)、仮字に狗馬の字を書。其人の後(しり)へに居て、人の善悪を知る也。今、マの音に狗(コマイヌ)也とある。
(山口志道「言霊秘書」p.519-520)


狛犬





記事更新日:2026/09/19