◎言霊シ❶
シの音は、昇水の灵にして、万物の初めを宰る。先に解か如く、動く物は水にして、動かしむる物は火なり。火の為に水動されて、始めて形を現して昇る。故に、今(いま)昇水の灵のシの音に始也と有。これ私の解にあらす。古事記神代の巻の神秘なり。二た柱の神、みとのまくはいの条に、女神先(まづ)あやにやしえ男(ヲトコ)をと、男神に先達て勅(ノリゴチ)玉ふ。是、女神は水にして、水始めをなすの法則を知らせ玉ふ神秘なり。故に、日本紀神代の巻には、其法則に違はすして、女男分(わか)たすと、女の水先(まづ)挙て、男の火を後に出して有。漢書にも、陽陰とはなし。陰陽と有。是、自然の法則也。故に、をみなは十三才にして其血氣定り、男は十五才にして全く血氣とゝなふ。是、女の水は、男の火より先達と知るへし。故に、往古(いにし)へは、婚姻を結ふにも、先(まづ)女の家へ男行て契りをなし、而後に男の家へ女をともなふ。是を、よばひと云。今、其礼儀残りて、女より先き酒をくみ始て、次に男に献するも、此法則の違はさると知るへし。草木の芽を生して延ひ行(ゆく)も、水気先達故也。ヨハヨハシイ。解の如く延すは、水にしてこらすは、火也。人も生まれて弱々しきは、水の先達か故に、水氣増りて時々剋々に成長する。俗に是を、水子と云。如レ此、万物の始めは皆(みな)水也。故に、昇水の灵のシの音に、始め也と有。しかし爰(ここ)に心得の有は、形をなす始めは、今の解の如く水也。しかれとも、形なき所に形なさしむるは火也。是より云はゝ、火を始めとも云へし。しかれとも、なさしむる物は形なし。なすは形有。なす形よりいへは、水は始めなり。混沌と形別(わか)らさる時は、何れを水とも、火とも、別ち難し。しかし、天地と別るゝ中に、先(まづ)天(てん)先(さき)に成りて、地(ち)後(のち)になる。天は空水にして、此ときは水。地は濁りて、此ときは火。其空水のあめは、つちより先になる。此水は、火より先達つと知るへし。夫を教ゆるか、神代の巻の神秘故、古事記には女神先(まづ)勅(ノリコチ)玉ふと有。日本紀には、女男と列ねて有。天地万物は、水先達(さきだ)つことを教ゆるの神秘ゆゑに、今(いま)昇水の灵のシの音に始也と有。
◎言霊シ❷
此シの一音に、始メと終ルと有は何そや。是、千早振(ちはやふる)神代の学にして、更に凡慮の斗(はか)る処に非。唯(ただ)、自然の理を以(も)て解くへし。先に解く如く、形をなす物は水にして、形なさしむる物は火也。形の始は、水氣勝て、火氣盛んならす。故に、惣(すべ)て春の若草の如く弱し。竟(ツヒ)に、大氣盛なるときは、又(また)其形も亦(また)盛なり。是、夏草(ナツクサ)の如く茂る。又、其火氣衰ふれは、形も亦衰へて、秋の草木の如く散崩る。即ち、元の水氣に帰る。是、盛なるは火、衰ふるは水。小児の力の柔弱なるは、火氣小きか故に、常に冷るも、全く老て火氣衰へて寒(さむき)か如く、老児同しことなり。是、水より起りて、水に帰る。日月はむば玉の暗より出て、同しく闇(くら)きに入。朝に露をなして、又夕部につゆをなす。是、初めも終りも皆(みな)水なり。始に離れて終なし。始終同一なることを知るへし。神代の巻に、始めにひるこを生みて、葦の葉の舟に入て流す。是、始めに終りを備ふるの神秘なり。次に、伊弉冉(いざなみ)の火水(カミ)神去(かむさり)在(ま)して後に、天照大神を生み玉ふは、母なくして生れ玉ふ。是、初めに終りを備ふるの神秘なり。母は死して後(のち)生るゝは、始に終りを備ふる神秘なり。始終同一の王法の教、王宮に有ても、初春に六朝より七日まては、神事あり。八日より十四日まては、仏事経営し玉ふは、始終同一の王法の法則なり。是、神代の神秘あるか故に、稲荷の古伝、天地自然の音を以(もて)教ゆ。古事記神代の巻の法則に違はさる、王法の規矩となるへき本元なる故に、ホの一音に起るのオと、終るのヲと備へ、ホより起てホに反る。始めに離れて、終りなし。終りに離れて、始めなし。今日の始は、昨日の終り。今日の終りは、翌日の始め。実に、始めに終りを備へ、終りに始めを備るの法則。是、皇国神代の法則。天地自然の規矩を現するか故に、今シの音に始也、終也と有。
(山口志道「言霊秘書」p.481-482)
◎イロハ口伝
何ゆへならば、生をはなれて死もなく、死をはなれて生もなく、本(もと)ホの一音に起るのオと、終(をはり)のヲを含み、天地開闢の時、はやをわるの義備(そなは)る。をわりに又(ま)た始めを備ふ。一をはなれて十なし。十をはなれて又(また)一もなし。唐の文字にすら、子始死共に音を同(おなじく)して、始(はじむ)るにもシ、終るにも又(ま)たシ、漢和自(おのづ)から灵合(たまあひ)と云(いひ)つべし。然れば、生死を知るの、このイロハ文也。
(山口志道「言霊秘書」p.529)
記事更新日:2026/08/09シの音は、昇水の灵にして、万物の初めを宰る。先に解か如く、動く物は水にして、動かしむる物は火なり。火の為に水動されて、始めて形を現して昇る。故に、今(いま)昇水の灵のシの音に始也と有。これ私の解にあらす。古事記神代の巻の神秘なり。二た柱の神、みとのまくはいの条に、女神先(まづ)あやにやしえ男(ヲトコ)をと、男神に先達て勅(ノリゴチ)玉ふ。是、女神は水にして、水始めをなすの法則を知らせ玉ふ神秘なり。故に、日本紀神代の巻には、其法則に違はすして、女男分(わか)たすと、女の水先(まづ)挙て、男の火を後に出して有。漢書にも、陽陰とはなし。陰陽と有。是、自然の法則也。故に、をみなは十三才にして其血氣定り、男は十五才にして全く血氣とゝなふ。是、女の水は、男の火より先達と知るへし。故に、往古(いにし)へは、婚姻を結ふにも、先(まづ)女の家へ男行て契りをなし、而後に男の家へ女をともなふ。是を、よばひと云。今、其礼儀残りて、女より先き酒をくみ始て、次に男に献するも、此法則の違はさると知るへし。草木の芽を生して延ひ行(ゆく)も、水気先達故也。ヨハヨハシイ。解の如く延すは、水にしてこらすは、火也。人も生まれて弱々しきは、水の先達か故に、水氣増りて時々剋々に成長する。俗に是を、水子と云。如レ此、万物の始めは皆(みな)水也。故に、昇水の灵のシの音に、始め也と有。しかし爰(ここ)に心得の有は、形をなす始めは、今の解の如く水也。しかれとも、形なき所に形なさしむるは火也。是より云はゝ、火を始めとも云へし。しかれとも、なさしむる物は形なし。なすは形有。なす形よりいへは、水は始めなり。混沌と形別(わか)らさる時は、何れを水とも、火とも、別ち難し。しかし、天地と別るゝ中に、先(まづ)天(てん)先(さき)に成りて、地(ち)後(のち)になる。天は空水にして、此ときは水。地は濁りて、此ときは火。其空水のあめは、つちより先になる。此水は、火より先達つと知るへし。夫を教ゆるか、神代の巻の神秘故、古事記には女神先(まづ)勅(ノリコチ)玉ふと有。日本紀には、女男と列ねて有。天地万物は、水先達(さきだ)つことを教ゆるの神秘ゆゑに、今(いま)昇水の灵のシの音に始也と有。
◎言霊シ❷
此シの一音に、始メと終ルと有は何そや。是、千早振(ちはやふる)神代の学にして、更に凡慮の斗(はか)る処に非。唯(ただ)、自然の理を以(も)て解くへし。先に解く如く、形をなす物は水にして、形なさしむる物は火也。形の始は、水氣勝て、火氣盛んならす。故に、惣(すべ)て春の若草の如く弱し。竟(ツヒ)に、大氣盛なるときは、又(また)其形も亦(また)盛なり。是、夏草(ナツクサ)の如く茂る。又、其火氣衰ふれは、形も亦衰へて、秋の草木の如く散崩る。即ち、元の水氣に帰る。是、盛なるは火、衰ふるは水。小児の力の柔弱なるは、火氣小きか故に、常に冷るも、全く老て火氣衰へて寒(さむき)か如く、老児同しことなり。是、水より起りて、水に帰る。日月はむば玉の暗より出て、同しく闇(くら)きに入。朝に露をなして、又夕部につゆをなす。是、初めも終りも皆(みな)水なり。始に離れて終なし。始終同一なることを知るへし。神代の巻に、始めにひるこを生みて、葦の葉の舟に入て流す。是、始めに終りを備ふるの神秘なり。次に、伊弉冉(いざなみ)の火水(カミ)神去(かむさり)在(ま)して後に、天照大神を生み玉ふは、母なくして生れ玉ふ。是、初めに終りを備ふるの神秘なり。母は死して後(のち)生るゝは、始に終りを備ふる神秘なり。始終同一の王法の教、王宮に有ても、初春に六朝より七日まては、神事あり。八日より十四日まては、仏事経営し玉ふは、始終同一の王法の法則なり。是、神代の神秘あるか故に、稲荷の古伝、天地自然の音を以(もて)教ゆ。古事記神代の巻の法則に違はさる、王法の規矩となるへき本元なる故に、ホの一音に起るのオと、終るのヲと備へ、ホより起てホに反る。始めに離れて、終りなし。終りに離れて、始めなし。今日の始は、昨日の終り。今日の終りは、翌日の始め。実に、始めに終りを備へ、終りに始めを備るの法則。是、皇国神代の法則。天地自然の規矩を現するか故に、今シの音に始也、終也と有。
(山口志道「言霊秘書」p.481-482)
◎イロハ口伝
何ゆへならば、生をはなれて死もなく、死をはなれて生もなく、本(もと)ホの一音に起るのオと、終(をはり)のヲを含み、天地開闢の時、はやをわるの義備(そなは)る。をわりに又(ま)た始めを備ふ。一をはなれて十なし。十をはなれて又(また)一もなし。唐の文字にすら、子始死共に音を同(おなじく)して、始(はじむ)るにもシ、終るにも又(ま)たシ、漢和自(おのづ)から灵合(たまあひ)と云(いひ)つべし。然れば、生死を知るの、このイロハ文也。
(山口志道「言霊秘書」p.529)



















































































