◎言霊ハ⓫
ワに唱るときは、〇(ワ)の心をなす。先(まづ)、仮名にはハと書てあれとも、唱ひはワとよむときのこと也。例せは、アハレと書ときは、ワに読。此とき、仮名の儘にて、ハの心にてアハレムの語を解(とく)ときは、解(とけ)す。何故ならは、先アハレムの語は、アは空水の灵にしてミヅカラ(自)のこと。ハは放つの義。ムは睦の義。是、自ら開き、放ち、睦と云ことになる。是を以(もて)、アハレムのときは、ワは〇にして、かどたゝす、まろきこと。ムは睦むことにて、おのつから△の形にならず。其ときは、ハをワに称て、ワの心を以(もて)解(と)けは、解(とく)る也。アは自(ミヅカラ)也。丸く睦むと云ことになる。是にて、アハレムの義解る。又、アハレを、アツハレの心につかふことあり。アは、自(ミヅカラ)。ハは字の如くにて、放ち開くことにして、ハル、ハレと用(はたらき)て、アツハレの心をなす。此ハの音を、ワの音に称るときに、此二つ心得あると可レ知。縁(チナミ)に云。哀は、広韻に悲哀也。ア〇(ワ)レム、憐は、愛也。哀矜也。ア〇(ワ)レム、二義あり。憫は憂也。ア〇(ワ)レム、愍は、非也。憐也。ア〇(ワ)レム、二義也。然れは、ア〇(ワ)レムに悲也、愛也、憂也、三義あり。今、一のア〇(ワ)レムを解とも、顕は三義ありとなす。志道は、三義のこと知るや否や。余の志道に学ふ者、未た知るへからす。哀哉、嗚呼、事は布斗麻邇灵伝に委(くは)し。
(山口志道「言霊秘書」p.414-415)
平安時代の人
記事更新日:2026/05/10